株式会社森川ゲージ製作所 様
香川県木田郡にある株式会社森川ゲージ製作所様は、1955年に測定器メーカーとして創業し、現在は船舶用エンジン機器や建設機械用油圧バルブなど、精密機器・部品の設計製作を得意分野としています。
”電気代削減 × 稼働監視 × 恒温環境”
工場のデータを一元管理し進化を支えるシステム
森川ゲージ製作所様の最大の強みは、高度なラッピング(鏡面仕上げ)など、他社には真似できないような高度な独自技術です。特に、硬い特殊金属材料の表面を幾何公差で1~3μmまで磨き上げる手仕事は、高い耐熱性や耐摩耗性・耐久性を求められる油圧機器や船舶のエンジン部品などに必要不可欠技術として顧客から高い評価を受けています。近年は技術がより高く評価される新市場を求め、シンガポールを起点に活動範囲を海外にも広げています。
森川ゲージ製作所様の精密仕上組立品のサンプル。上部の握りを引き上げると自重で下がる構造で、このボディとスプールのクリアランスが7~8μmに調整されている。また前面の丸い部分はラップ加工の鏡面仕上げにより平面度1μm以下に仕上げられている
森川ゲージ製作所様は売上高の10~15%の設備投資を継続しており、
2023年にIoTプラットフォーム「Remces」を導入頂きました。
導入の経緯について、同社の森川正英社長と、導入を主導した西山秀作設計部長に話を伺いました。
お客様の声 : Remces導入のきっかけ
はじまりは「生産管理と現場の見える化に取り組みたい」
社内の課題のひとつとして「生産管理と現場の見える化に取り組みたい」という話が出ていました。RYODENさんには以前に協働ロボットの導入をサポートいただいたことがあるので、その課題を営業担当の植田さんにお話ししたところ、Remcesのチラシが出てきて… それで具体的な検討が始まりました。
後日、東京からRemcesの担当者に来てもらって詳しく聞いてみたら、当社の「こんなことができたらいいなぁ」という部分にちょうどはまった、という流れです。
前回のロボット導入時のやり取りから、植田さんは「自社が売りたいものを売る」のではなく「顧客の課題をどうやったら解決できるか」を常に考えてくれるスタンスだということはわかっていたので、安心感をもって進めることができました。(森川社長)
お客様の声 : Remces導入の目的
3つの課題にまとめて対応できる「一石三鳥」のシステム
当社がRemcesの導入で実現したいポイントは3つありました。
1.電気代高騰への対応
近年の電気代の高騰により、空調や設備稼働のための電気代は、工場の運営コストの中で大きなウエイトを占めるようになってきました。そのため、工場内のどの部分で電気をたくさん消費しているのか、というのをまずはデータで把握することが大切だと考えました。
特に今回、本社工場の敷地内で最も新しいE棟にRemcesを導入したのですが、この工場は当社として初めて、恒温環境を保つため常時空調を導入した建物です。8台の空調機を効率良く運用するには、8台全部を控えめに稼働するのが良いのか、または3台程度に絞って集中的に稼働する方が良いのか…。このようなことは実際にデータを取ってみないとわかりません。
さらにそのデータについては、人が集めて記録したりすることなく、システムが自動的に情報を取ってくれないと意味がないと考えました。その点Remcesではデータが自動的に集まってきて蓄積し、最終的にはシステム側から制御できる仕組みになっている点がポイントになりました。(森川社長)
2.現場の稼働状況の見える化
2つ目の目的は、機械の稼働状況の見える化により、作業効率の改善につなげることです。
機械の稼働率・稼働時間を見るとき、段取りや待機時間を細かく見ていくと、実は機械が本当に削っている時間は50%くらいしかないような場合もあります。こちらとしては稼働率を上げていきたいので、ここには改善の余地が大いにあると思いました。
戦略的に改善を進めていくためには、データに基づく客観的な現状把握が第一歩です。そこでRemcesには工場の環境監視だけでなく、設備の稼働監視も組み込むようにお願いしました。
現状では、E棟以外の設備は社員が手書きで稼働時間を記録しているのですが、どうしても人によって「停止中」のとらえ方や時間の測り方にばらつきが出てしまいます。また、停止中にも種類があって、段取り中なのかエラーで停止中なのか、運転準備中なのか… このあたりの記録方法も統一する必要があったので、杓子定規で見られる定量的なデータが自動的に集まるようにしていきたいと考えました。Remcesの導入で、経営戦略につなげられるデータが集まる良い道具を手に入れることができました。(西山部長)
3.環境配慮の必要性
当社はJETROの協力を受けて、シンガポールを起点に海外からの受注を進めています。海外の企業は既にESGをすごく意識していて、特に当社が参入を目指している北米やEUでは、環境配慮を意識した設備投資や事業方針が今後の取引の必須条件になっていくと感じています。
日本でも数年後には必要になってくるでしょうから、当社が先駆けて、会社の長期的な成長戦略として取り組む必要があると考えました。
生産指示や生産管理、稼働監視などに特化したほかのシステムも話題にはなりましたが、当社が実現したかった3つのポイントをすべて叶えられるのがRemcesで、まさに一石三鳥のシステムだと感じて導入を決定しました。(森川社長)
お客様の声 : Remcesに対する評価
スモールスタート+柔軟なカスタマイズ対応
Remces のメリットのひとつに、メーカーを問わずいろいろなセンサや機器を後付けできる点があると思います。既存設備への改造・干渉を最小限に抑えて後付けで導入することができ必要な部分からスモールスタートできました。当社は新しい建屋のE 棟から導入を始め、恒温環境を維持するための温湿度データの取得や電力消費量のデータを取得しています。
独自こだわりのカスタマイズとしては、加工設備の稼働監視を追加いただいた点、画面表示を実際のレイアウトに即してアレンジしてもらった点、気象庁の気象データを表示いただいた点などでしょうか。こちらが必要だと思う機能について、柔軟に相談に乗っていただけたのが良かったです。(西山部長)
お客様の声 : 現在の使用状況と今後の展望
報告を受けなくてもデータを蓄積できるのは大きい
RYODEN さんとのシステムに関する打合せは2022 年12 月にスタートし、2023 年7 月に3 日間の設置工事を行ってデータ取りがスタート、8 月末から本格的な稼働が始まりました。最初の1年くらいはデータをためる時期だと思っているので、現在はデータを蓄積している状況です。空調制御等の制御機能の活用はこれからの段階ではあるのですが、データを見ていると設定温度±1℃には収まっている感じです。
稼働状況をオンラインで見ることができるのも良いと思います。今はまだRemcesが全棟に入っていませんので、会社全体では、稼働状況を日報で報告してもらって月次で集計しています。ただ、この報告・集計というのが作業負荷になっている面もありますので、報告しなくてもデータが取れるのは大きいですね。
また、月次の報告では1か月前の長時間停止の原因を追究しようとしても本人が覚えていないこともあり、「知りたいのはそこじゃない……」ともどかしい思いをすることもあります。Remcesで取得するデータを、稼働率の平準化や設備の無人稼働の推進に活用していきたいですね。(西山部長)
他のシステムとの連携から、全工場への展開へ
しばらくはデータが見えるだけでかなり解決する部分があると思っています。例えばRemcesから取得した電力量をベースに稼働時間を山積みして、設備ごとの負荷を見られるようになれば、現在月次でやっている手集計は不要になります。社内ではこのような新しい展開を進めていく計画です。
これからRemcesをもっと活用していくために、生産管理システムやスケジューラとの連携や予実管理、他の建屋への展開など、まだまだやりたいことは尽きていません。 RYODENさんと植田さんは、導入前から顧客目線を忘れずに対応いただけていると思うので、引き続き「当社がどうしたいか?」を見続けていただければと思います。今後ともよろしくお願いします。(森川社長)
システム概要
設備の稼働監視
設備のパトライトに無線通信機能付きのセンサを取り付けて、設備側の改造なしで対応しました。電力消費量の測定についても非接触式のセンサを選定し、工場の稼働に影響が少ないように導入しました。
ユーザーインターフェース
「稼働監視をするのであれば、現場に即した画面の方が社員が自分事としてとらえやすいのでは?」というお話をいただき、実際の工場と同じ並びで画面を作ることになりました。設備の3D画像については、西山部長からご提供いただきました。
もう一つ、ダッシュボードに気象台の気象データも追加しています。工場内の環境は外の天気にも影響を受けるということで、データを紐付けて確認できるようにとのご要望でした。
温湿度センサ+空調設備の連携制御
空調設備は室内機の吸込口で温度測定して制御するのが一般的ですが、室内機の位置が高い位置にある場合などでは実際の環境と差異が出てしまいます。Remces導入の目的の一つがE棟の恒温環境の維持ですので、森川ゲージ製作所様向けのシステムでは現場の温度管理箇所の付近に温湿度計を取り付けて、実際の数値をもとに空調を制御して、恒温環境を維持できるようにしました。